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研修医のためのキャリアノート

はじめに
このコラムをご覧になられた皆様、はじめまして、私は、株式会社ニューハンプシャーMCで医師の方々を中心とした転職支援をしています、中村正志と申します。当社では医師の方々の様々なキャリアサポートを行なっておりますが、研修医の方の支援を非常に積極的に行なっております。
具体的には初期研修から後期研修に移る時の就職支援、後期研修先を変更する際の転職支援などです。
当社は民間の人材紹介会社ですので紹介先の病院様からお金をいただく形態を取っております。したがってクライアントとなる病院様は民間病院様がほとんどなのですが、それでもご登録いただく研修医の方が大学病院や公立病院を希望する場合も、相談という形で対応しております。

また当社は医学生向けのキャリアサポートもプロジェクトを組んで行なっております。これまでキャリアについての勉強会やセミナーを数回開催しております。
この度執筆いたしましたこのコラムは、医学生向けに開いた「臨床研修病院の選び方&マッチングセミナー」でお話した内容を基本としておりますが、すでに研修医になられた方も基本的にお伝えしたいことは同じであるため、少し内容をアレンジしてまとめさせていただきました。
我々が研修医の方のご支援を特化して行い始めたのは2010年からになりますが、そのきっかけとしては、研修医の方の様々なキャリアの悩みについて少しでも力になりたいという想いからでした。いくつもの科目を回る中で「自分は何に向いているのか?」といった迷い、将来の自分の生き方を考えた場合のライフキャリアの問題、狭い世界ゆえ周りに中々相談が出来ないストレス、、、など。

おかげさまで当社が研修医の方に特化したサイト「レジデント・キャリア」を設立してから、多くの方がご登録いただき、そのマッチングのお手伝いやキャリア相談を受けてまいりました。我々がお力になれることは微々たるものかもしれませんが、この小冊子一つにおいても、皆様のキャリア形成に役立つことを願っております。

株式会社ニューハンプシャーMC
キャリアプランニング事業部 中村正志
Ⅰ.将来のキャリアをイメージしよう
1 キャリアとキャリアビジョン

①キャリアとは
皆様は、「キャリア」という言葉を聞かれて、どのようなイメージをされますか?よく聞く言葉ですが即答できる方は少ないかもしれません。おそらく“キャリアという単語単体で使われることより、キャリアアップ、キャリア形成、キャリアプランなど複合的に使う機会の方が多く、なんとなくイメージで捉えておられるのではないかと思います。
キャリアとは、そもそも中世ラテン語の「車道」を語源とし辿ってきた道や足跡を意味するもので、そこから人の経歴や職歴を表すようになったといわれていますが、現在のキャリア論においては、キャリア=人生そのもの定義することが多くなってきています。
これは広義な意味における解釈なのですが、それに対して狭義のキャリアとは仕事を中心とした経験を表します。ここでは基本的に狭義のキャリアという概念を元に話をしていきたいと思いますが、研修医の方々のキャリアというのは数年の研修経験ということになります。
研修というのは、人から教わることが多いためプロフェッショナルとしての経験はまだということになりますね。
したがって皆様のキャリアというのは、これから作っていくものであると認識されたら良いかと思います。
この小冊子においては、未来志向において医師としてどのようにキャリアを創っていくかということを念頭において話を進めてまいります。

②キャリアビジョンとは
キャリアビジョンというのは、まさしく自分の将来におけるビジョンです。どのような医師になりたいか?ということを自分の中でイメージできるようにしておけば、そのビジョンに対する目標設定が出来るようになります。皆様は医師国家試験に合格され、医師としての道を歩きだしておられ、医師以外の道を進まれるということは少ないと思います。
しかしながら医師と言ってもいまや色々な生き方が選択できます。
働く場所の選択、科目の選択、仕事と家庭とのバランスの選択など、皆様はこれから多くの選択をしていかなければなりません。
ビジョンが明確でないと、次の研修先選択や科目の選択において大いに悩むこととなります。
ただしキャリアビジョンというのは仮説で構いません。
現在の変化の激しい世の中においては外部の環境の変化に合わす必要性も出てきるため、凝り固まったキャリアビジョンでは、変化の波に対応できない場合があります。
キャリアビジョンはないよりあった方がよく、また変化に応じて柔軟に変更可能ということです。
またキャリアビジョンは一朝一夕には出来ないと思います。
色々な先生方や患者さんとの交流、自分の興味や将来についての考え方など研修期間に色々と体験をする中でおぼろげながらも見えてくるといった形でも結構です。


2 医師のキャリアイメージの比較
弊社では、研修医を含む若い先生のキャリア相談を多く受けておりますが、これは10年ほど前においては考えられなかったようなことだと思います。もちろんいつの時代においても、これからの自分の将来について悩まない人はいないくらいで、どんな職業であっても迷いながら皆、人生を送っていると思います。
ただ医師において、昔と今では選択の幅が大きく違うということを制度上の問題にもふれながらその違いをご説明したいと思います。
下の図1にあるように、2004年以前、つまり初期臨床研修の必修化前は、医師になるための国家試験を受け医学部を卒業した後は、出身大学医局にて研修を受けることが一般的でした。
科目選択においても先輩からの勧めや周りの圧力により、“なんとなく”選択をし、勤務先については教授や医局長からの派遣要請に従っていました。
その後は派遣先をいくつか経験しながらどこかの病院に落ち着くか、医局での管理職となるかというキャリアルートで、唯一の決断としては開業するために医局を抜けるということのみでした。もちろん、昔も医局に縛り付ける法的な拘束力はなかったため、自由な選択をされている先生もいましたが、基本的に医師に選択権というのはあまり存在しなかったといえます。

図1


それに対して、現在の医師のキャリア(図2)を見てみると、医学部卒業後の初期研修病院の選択、後期研修病院の選択、研修終了後の選択というように勤務先を自由に選択できるようになりました。
また科目選択も同様に本人の意思がより尊重されるようになったため、ある意味個人の責任においてキャリアを作っていくという発想が必要になってきたのです。

図2



3 自分を知ることで、キャリアビジョンをつくろう
キャリアビジョンを作ろうということは先ほども述べましたが、ではどのように作ったら良いのか?明確な答えはありませんが、基本となるのは「自分を知ること」です。
キャリアというのは、過去→現在→未来というプロセスの中で作られていくものです。
つまり現在というのは過去の延長であり、自分が生きてきた過程の中から将来的なビジョンが見えてくるのです。
それゆえ自分を知るということが大切になってくるのですが、おそらくこの作業を大学生の時にやっていないのは、医学生のみかもしれません。
一般の大学生や就職活動をする際にまずやることとして自己分析というものがあり、それに基づいて自分の就職希望を決めていくのです。
正直なところ自己分析をしたからといって希望の業種や業界に行ける訳ではないですが、社会に出て行く上では、自分を知るということは非常に大切なことだと思います。

では、自分を知るということはどういうことか?以下に簡単なチェックを書かせていただきました。



まだ研修医という立場もあってなかなか明確に自分を理解できない部分はあるかもしれませんが、まずはイメージをすることが大切です。
例えば自分はどんなタイプの仕事がしたいか?ということであれば、「個人プレー重視かチームプレー重視か」といったことや「患者さんに寄り添うような医療がしたいのか、それとも効率的な診療により経営的にも役に立てるような医師になりたいのか」といったことを考えてみます。
研修病院の選択などにおいては、これまで受験した大学のように偏差値がある訳ではなく、自分の選択基準というのがすべてです。
その基準を知るためにも自分を知ることは大切で、それは自分のプライドや周りの視線などを排除し、自分に対していかに素直になるかということが重要です。


Ⅱ.病院選択の前に知っておきたいこと
 前項までは、キャリアを作る上での、心構えやキャリアを考えることの意義、自分を知るということの大切さなどを話題にしましたが、この章においては今後働くことになる研修病院についての話をしたいと思います。この小冊子の多くの読者の方はおそらく初期研修医の方で、勤務をする上で病院の良さ、悪さなどを実際に体験されているでしょう。
しかしながら、初期研修くらいであればまだまだ病院の種別や機能などは十分な理解はされていない方も多いと思います。
非常に基本的な話となるかもしれませんが、今一度病院のことについて簡単にご説明しいたします。


1 研修病院の種別

非常に大雑把ではありますが、以下に研修病院となるような病院の種別を分類しました。
大きく分けると大学病院と市中病院ということになると思いますが、大学病院は国公立大学と私立大学とに分かれ、市中病院は自治体病院と民間病院に分類されます。
このような種別においては病院名を見たら分かるということになりますが、大学病院はさておき、民間病院においては様々な設立主体があります。
自治体病院においては都道府県や市区町村が設立したものですが、いまや自治体病院であっても民間が運営していたり、また民間病院という位置づけにはなりますが、実際は公立に近い経営体系をしているものに赤十字病院や済生会があります。
医学生の時に初期研修選択をする際、皆様は自分が選択したいプログラムや指導体制を考慮し、現在ご勤務されているかと思います。
初期研修においては厚生労働省の指導もあり、各研修病院において横並び意識があるかもしれませんが、後期研修以降の病院選択においては、どのような設立主体がどのように運営をしていることかということを知ることは大変重要です。
それは、給与額や昇進体系、福利厚生、連携病院や医局とのつながりといったことにおいて特徴が各病院において違ってくるからです。もちろん同じ設立主体の中でも方向性が違う病院はあると思います。
ただ、自分が働く病院においてどこが運営しているのか?どういう方向性で病院を運営しているのか?ということは最低限知っていくことが必要となります。





2 大学病院と市中病院の違い

大学病院と市中病院どちらで働くかということは、後期研修以降の病院選択においても皆様を悩ませる事項の一つになると思います。
すでにある程度の経験や知識はあり、2つの種別の違いについては理解されていることが多いと思いますが、改めて以下にまとめさせていただきました。初期研修医むけに書かれたものだと思いますが参考にはなります。
どちらについてもメリット、デメリットはあり、一般的にこちらの方が良いというようなことを我々の立場から言うことは出来ません。
決定するのはあくまで先生方であって、先生の中に答えがあるといっても過言ではないのですが、やはりそこで重要になってくるのが“キャリアビジョン”です。
次の病院選択において、どのような医師として働きたいか?研修を受けたいかという仮説がなければ、大学病院か市中病院かという選択さえ出来ないことになります。

 

大学病院

市中病院

病院の役割・位置づけ

・高度先進医療機関

・研究・教育機関を兼ねる

・診療所と大学病院の中間

・診療中心

病院の規模

1000床くらいの規模

300床以下から1000床まで様々

症例

特定疾患など高度医療を要する特殊な症例が多い

病院の規模にもよるが概ねcommon diseaseが多い

医師数

大学院生、研究生を含め相対的に多数

公的病院は比較的多いが民間病院は手薄

研修医数

週十名~数百名

数名~数十名

研修指導体制

医師、研修医多く、学生を含めた屋根瓦方式が可能

医師、研修医は少なく、一部を除き屋根瓦方式は不可能

身体で覚える

×:1人あたりの症例が少ない

〇:症例の経験はかなり多い

教えて覚える

△:体制的には可能

×:教育的な雰囲気はない

研修上の特徴

少ない症例を学術面を含めじっくり学ぶ(勉強>トレーニング)

症例数をこなすことが中心で、学術面では余裕なし(勉強<トレーニング)

人気・不人気の背景

“普段の姿”を見られていることに注意

「研修医は病棟のお荷物、学生は邪魔者」では残らないのが当然?

見学・実習生はお客様

学生とすれば、普段の姿を知ることが肝要

『医師不足と地域医療の崩壊 vol2.現場からの提言、医療再生へのビジョン』の中で昭和大学医学部精神医学教室市村公一氏の資料をもとに作成

3 研修病院の満足度

前項に続きますが、大学病院と市中病院の比較という形で満足度の調査が行なわれています。
これは厚生労働省が行なっているもので、実際の研修医にアンケートを取って行なわれたものです。
こちらも初期研修医が対象ですが、大学病院と市中病院の違いを表す良い資料になっているかと思います。
アンケート結果においては圧倒的に市中病院の結果がよくなっていますが、これも冷静にご判断いただきたい項目の一つです。
最近の傾向として、初期研修先は市中病院、後期研修先は大学医局という選択をされる割合が比較的多くなっているように感じます。
これは専門医取得や症例数の多さなどから失敗がない選択をしようということで大学病院を選択されるケースになるかと思います。
もちろんマイナー科の選択においてはそもそも市中病院における募集が少ないという背景もあるため、特定の科目においては大学病院しか考えられないという場合もあります。
しかしながら医局に属したことによる弊害(出身大学出身者しか優遇されない、医局を今度は出れなくなった、実は症例が回ってこない)などの報告も受けています。
もちろん市中病院においても問題がないということはないと思いますが、下記のアンケート結果も踏まえて、病院選択をされるのが良いかと思います。

研修病院のプログラムの満足度


研修病院などで満足している点



上下とも厚生労働省による研修医へのアンケートを元に作成


4 地域における医師の偏在と医療機関の体制について

現在、日本においては『医師不足』ということが度々話題になります。おそらくそのイメージとして皆様が持たれているのは、都心部に対して地方に医師が足りていないという状況を思い浮かべられることと思います。実際これは患者さんに対する医療サービスと言う点において大きな問題ですが、医師のキャリア形成においても関連してくるものとなります。
開業しない限り、先生方は勤務医という形で働くことになりますが、これは労働市場の中で需要と供給の上成り立つものとなります。
研修中の身であればあまりイメージが湧かないかもしれませんが、各医療機関は基本的に足りていない、もしくは今後の人員不足に対応して医師の募集をします。
大学病院については研究や教育といった観点において人数配置をしており労働市場という考え方は受け入れにくいかもしれませんが、とはいえ大学病院も赤字ではやっていけない時代が来ています。
給与をもらって働くということは、求人のニーズが存在しなければ先生方の労働力は必要なしということになります。
そういった観点から都道府県別の医師の数を見てみましょう。

〇都道府県別にみた医療施設に従事する人口10万人対医師数/平成20年(厚生労働省)


小さくて分かりづらいかもしれませんが、医師の数が多いのは東京、京都、徳島などで、少ないのは埼玉、茨城、千葉などです。
そうなると求人ニーズとして高いのは埼玉、茨城、千葉>>>東京、京都、徳島 となりますね。
ではそこで働く医師について給与はどうなるか?当然ですが埼玉や茨城の方が東京よりも高くなります。
なぜなら東京では低い給与額においても医師が集まるからです。
これは県別だけの話に終わらず、例えば東京の中においても、東京の都心部と郊外では給与が変わってきます。
また給与だけでなく医療機関の人員についても都心部では充足しており、地方では足りていないということになると教育体制にも影響が出てきます。
後期研修においては、初期に比べ院内規定においては医師とされるケースも多く、給与についても病院の場所において随分と差が出てきます。
後期研修以降は、研修が主となったとしても需要と供給のバランスの中で勤務をしていくという意識を少しお持ちになった方がよいでしょう。


5 科目における求人ニーズについて

皆様が医師としてキャリアを築いていく上で最大の選択となるのが、自分は“何科”を選ぶのかということだと思います。勤務先や研修を受ける大学は変えることは出来ても、科目についてはそう簡単に変えれません。初期研修の時は色々な科を回りながら自分が将来的にやっていきたい科を選択することになるかと思います。
高校、中学、もしくはもっと幼少期から自分はこの科のお医者さんになる!と強い決意があった方は別ですが、大方の研修医が初期研修期間中に自分の科目選択に迷っているのが現実だと思います。
統計的にも研修前と研修後に選択したい科目の変更があった方は半分くらいいるようなので、いかに皆様が迷いながら科目選択をされているのかが分かります。
複数の科をローテートで周り、これが自分に合っていると思うことが大切で、やはり一番は先生方のやる気だと思います。ただ一つご認識していただきたいことがあります。
それは科目における求人ニーズについてです。以下は当社に1年間でどのような求人が来たかということをグラフ化したものですが、内科系、外科系、他科系という風に分けた場合、約半分の求人が内科系でした。つまり医療機関(≒患者)が求める科目ニーズの半分が内科系であるということです。また右の表においては詳細な科目別の求人数がありますが、医師が不足しているという科目においても求人数はそう多くはないということが分かると思います。
研修医の方が初期研修中によく「〇〇科がこんなにハードとは思わなかった」ということを言われます。
それで最初に考えていた科目を変更されることがありますが、人気の科目というのは求人数が少なくなるということにつながり勤務先の選択肢が狭まるということを意味します。
もちろん求人ニーズにすべて合わせろとはいえません。
基本的には先生の熱意、やる気です。ただ現在の求人ニーズというものも少し意識していただきながら、冷静に科目選択は行なっていただきたいと思います。

〇求人別の割合





平成21年度当社社内資料
Ⅲ.何を基準に研修病院を選ぶか
1 研修病院選択の基準

皆様は初期研修病院の選択に際し、どのような基準で希望の病院を決められましたか?
オーソドックスな理由として、指導内容やプログラム内容というところが上位に来るのではないかと思います。
初期研修選択の際はまだ科目の選択が出来ていない状態なので、病院の選択というよりは、プログラム内容の選択という意味合いが強かったかもしれません。
初期研修を実施している病院についても、初期研修医はまだ戦力とはならないため取り急ぎ定員を埋めるだけという病院様もあると聞いています。
しかしながら後期研修医(3年目)となるといわゆる『医師』として本当の一歩を踏み出すことになります。
研修医やレジデントという名前は残っているかもしれませんが、ある意味この選択が今後のキャリア形成の鍵を握ることになるといっても過言ではありません。
しかもそのような重要な選択を、初期研修中のわずか2年間(実質半年~1年ほど)で決めていかなければならない訳ですから、研修病院の選択については何を基準にするかということは早めに決めておいた方が良いでしょう。
当然自分が行きたい科目ということがないと、研修病院を探すということも行えない訳ですので、まずは科目を絞るということが必要になります。
次に研修病院の選択に入るわけですが、病院の募集をぼ~と眺めているだけでは、何も決断できません。もちろん今の研修医の方であればインターネットでの検索はもちろん大学の先輩、同僚、ご両親などにも相談し、病院の評判や口コミなどの情報も収集されると思います。しかしながら自分で選択の基準は決めておくべきです。
たとえば、初期研修病院選択の項目と重なりますが、

・後期研修プログラムの内容
・指導医
・立地
・給与
・職場環境
・大学との関連

などでしょうか。
そしてそれらの基準を優先順位付けしていただきたいと思います。それにより、数多くの研修病院の中からどこの病院が自分に合っているかということを冷静に判断することが出来ます。

Q.皆さんはどのような基準で研修病院を選びますか?またその基準に優先順位をつけてください


2 研修病院を知る

研修病院を選択し、入職した場合は、その病院の経営方針に従って勤務することになります。
初期研修病院の場合は先ほども申した通り、勤務という意味合いより研修という意味合いの方が強いこともあり、経営に参画していたという意識は低いかもしれませんが、後期研修医としてはいち労働力とし病院運営を支えていかなければなりません。
なお、私はいつも医学生の方に対し、研修病院の選択にあたってはまず『病院の理念を確認して下さい』と申し上げています。
一般の企業については当たり前のことですが、企業の経営理念というものがあり、そこから会社の運営方針が出来、それに沿って日々の業務が生まれるのですが、これは医療機関についても同様のことが言えます。
今は医療機能評価機構というところが、一定以上の病院に対しては評価を行なっているのですが、経営理念や運営方針についてのチェックを厳しく行なっているので、おそらく病院のホームページや院内の受付あたりに、そういった重要なことは掲げていると思います。
そして病院の理念は、病院の臨床、教育、研究、危機管理、、、などにも反映され、教育ということにおいては、研修理念というものがあるはずです。また臨床ということについては職員が患者さんに対してどのような態度で接するべきかということも明文化されているかと思います。
まずはそういった病院の文化やビジョンを知った上でプログラム内容や指導体制などの詳細な検討に入ってください。 
そのような準備をした上で、病院見学や面接を行っていただきたいのですが、その際は自分が選ぶ基準を満たしているか、自分のやりたい方向性にあっているかを十分に吟味して下さい。
研修医の方をよく病院にお連れしますが、面接の際に質問を全く用意していないような方も多く見られます。研修病院は自分で“選ぶ”という意識を持ち、大切な面接の場を無駄にしないようにすることも重要です。



3 研修病院選択のポイント

研修病院を選択する際に大切にして欲しいポイントを以下の5つにまとめました。

①何はともあれ、研修病院を選択する際の優先順位を決めておくこと。
繰り返しになりますが、自分の判断基準を決めていないことには、自分に合っている、合っていないの評価が出来ません。
面接は通常1回しか行なわれないですし、あまり中途半場な立場を取っていると、求人をしている病院様からも印象が悪くなります。

②疑問点は自分の目と耳で確認!
研修病院情報を掲載しているサイトや病院ホームページは基本的に求人広告と思ってください。
給与や勤務条件については、ウソを書いてはいけないため疑う必要は基本的にありませんが、求人内容全般を通して悪いことは書かないのが普通です。
それゆえ自分で何か気になることがあれば積極的に質問し、現場にも足を運んでください。病院は誰でも入れるので、面接以外の日に外来を観察するというのも一つの手です。

③研修病院の担当者の印象も重要!
受付は企業の顔とも言われますが、皆様がやり取りをする職員の対応についても注意を払うべきです。ちょっとした質問でも気軽に答えていただけるか、スピード対応は出来ているか、面接当日の案内はスムーズかなど、病院の教育体制が末端の職員まで行き届いているかということを知ることは、気にしていただきたい項目の一つです。

④最終的な決断は自分がこの病院で働くイメージができるか!
いくら判断基準の優先順位を決め、冷静に考えても自分が行くべき病院を決まらないことがあるかもしれません。
その場合は、『自分がこの病院で働くイメージが作れるか?』ということを考えてください。最後の最後は自分の直感というものが重要となります(恋愛や結婚と同じです)。

⑤研修先が決まったらそこでの数年間は頑張りぬくこと
「入職前のイメージと違う」、「指導医との相性が悪い」、「症例が積めない」。。。
入職してからもつらいことは多いと思います。こんなはずではなかったと後悔する時があるかもしれません。あまりにもひどい勤務内容だったり、病気になった場合は別ですが入職して最低3年は辞めないという心構えで頑張ってください。
無駄なようなことであってもいつか報われる時が来るはずです。
つらい時も前向きに目の前のことに積極的に関わっていくことがよいキャリアを作る上でも重要です。

Ⅳ.自分のために「キャリア」を形成する
1 先輩からのアドバイス

研修医である皆様は、現在研修されている病院で色々なアドバイスを受けておられると思います。
内容としては診療についての内容が主になると思いますが、今後の病院選択や科目選びについてなどは研修医の方も興味深く話を聞かれていることと思います。
弊社は医師の転職支援事業を行なっており、転職希望を聞く上でその背景やなぜ転職を考えるのか?といった深いヒアリングまでしておりますので、先生方の個人的な悩みやキャリアについての相談をよく受けます。
それは公に話せる内容ではないものも多く、皆様さまざまなことに悩みながら医師という職業に就いていることが分かります。
そこで何人かのベテランの先生をピックアップし、医学生や研修医の方にメッセージをいただくことにしたのですが、いくつかの点で共通している項目がありました。それは以下の5つになります。

1.医師として生きることにプライドを持ち、医師であることはブレない
2.先生方のキャリアは様々。一つとして同じキャリアはない
3.何かしら目標を掲げそれをクリアしていくような経験を持つこと
4.自分の目指す方向性と違ったことであっても前向きに勤務すること
5.若い時の経験はすべて今後に活きる
 

若い研修医の時は、社会人という意識が低くまたプロフェッショナルとしての自覚も低いため、周りに流されたり自分を見失うこともあります。
研修医の何割かの方がうつ症状になるということもお聞きします。
それだけ大変な時期ではありますが、やはり前向きに目の前の仕事に全力で取り組む姿勢が大切で、おそらくそういったことを先輩医師はお伝えしたいんだと思います。
研修医の方はそういった助言には積極的に受け入れるべきでしょう。
ただ研修医の場合、大変忙しいという環境と医療界独特の閉鎖的な環境によって、研修先病院の狭い範囲でしかアドバイスが受けれないということが多いような気がします。
自分が目指している科の先生がいない、大学医局の話しか分からない、魅力的な先生が周りにいないなどで、十分な情報収集が出来ないということを研修医の方からお聞きしたことがあります。
将来のキャリア選択については、やはり多くの先輩方のアドバイスは参考にすべきです。
今はインターネットにしろ、雑誌にしろ情報は多く先輩医師のインタビューが載っていたりします。
また医師の方をスピーカーとしてセミナーが開かれていたり、我々のような人材サービス会社を利用する手もあります。
情報過多になり何も決められないとなったら本末転倒ですが、自分が知りたい情報やお会いしたい人には、積極的に相談してみればよいと思います。
弊社にも研修医からよく相談を頂きます。
我々がこれまでお会いした先生の話を元にして、研修医の方にお役に立つような情報やアドバイスをしていますので、ぜひご活用下さい。


2 プロフェッショナルな医師となるために

皆様は、医師になるという道を目指された以上、プロフェショナルになることを望まれていると思います。
プロフェッショナルというのはお客様からお金を頂き、常にその対価以上のサービスを提供できる人のことです。
それはスーパードクターになるということではなく、患者さんや周りの働く方々に評価されて、一人前の医師として認められることが基準となります。
医師を目指される方というのは自己処理能力が非常に高く、研修医であったとしても周りからの尊敬されることが多いため、どうしても行動や考え方が独りよがりになる傾向があります。
しかしながら医師であっても、キャリアは自分だけで創れるものではありません。周りの方々の協力があり、共に創られていくものです。
それゆえいくら腕が良く手術が早くこなせる医師になったとしても、社会人としての常識やマナー、患者さんや他職員への態度が悪ければ組織からの評価は低くなるでしょう。
弊社のお付き合い先の病院様においても、上記のような先生は辞めていただいているということをよくお聞きしています。
もちろん専門とする科目に対する最低限の知識、経験などは必要で、それがなければ医師の仕事は務まりません。しかしながらすばらしいい腕ではないけれども、周りの方との良好な人間関係が築けるような先生は重宝されます。
つまりプロフェッショナルとして必要な要素としては、テクニカルな要素(専門能力、実績・経験)と共に人間的要素(人間性、癒し・エンタテイメント性)が必要となってくるのです。
医療機関の面接においても、採用側が医師に対して一番重視する項目が『人間性』です。
人間性を上げていこうと思っても、一朝一夕では磨かれません。しかもベテランの先生が自分の考え方をリセットして、再度心を入れ替えようと思ってもそう簡単には変わりません。
やはり若く、柔軟な考えが出来る研修医時代に人間性を磨くことが、その後のキャリアを左右していきます。
なかなか難しいことかもしれませんが、仕事以外においては「医師」という立場を忘れ違う立場の人と交流をすることも重要かと思います。
先生方が診療するのは、医師以外の人がほとんど。将来自分の患者になるような人と仮定すると、その方々の考え方や価値観を知っておくということは必要不可欠です。
ぜひ若い時に職種や世代を越えて様々な方と交流を深めていただきたいと思います。




3  計画された偶然性

皆様がよりよいキャリアを作っていただくために、最近になった注目されている理論をご紹介したいと思います。
計画された偶然性(Planned Happenstance)という概念で、米スタンフォード大学のクランボルツ博士によって提唱されたものです。

『個人のキャリアの8割は予想しない偶発的なことによって決定されるため、それぞれの予期せぬ偶発的な出来事を上手に活用することによって、ただの偶発的な出来事も自分のキャリア形成の力に変えていくことが出来る。それは1人1人の主体性であり意識的努力によるものである。なぜなら偶発的な出来事が起るその前には、自分自身の様々な行動が存在しており、その自分の行動が次に偶発的に起るその出来事を決定しているともいえるからである。』


(キャリアカウンセリング 宮城まり子/駿河台出版社 から引用)



キャリアというのは用意周到、綿密に計画して準備できるものではありません。自分で計画していたハードルを乗り越えることが出来なかったり、家庭や周りの環境の変化において自分の思い描いていたキャリアと違うものに結果的になることも多いと思います。
この小冊子においてもキャリアビジョンを創ろうということでお話しましたが一定のビジョンや目標を作ることはとても大事です。
しかしながら現在の変化の激しい社会の中で多様な価値観を受容する社会においては、一方で柔軟な考えや変化への対応力というものも求められています。
そのためにはあらゆる偶然の出会いを大切にし、主体的にその偶然を活用する準備と実践が必要となってきます。
初期研修医の方であれば、様々な診療科をローテーションで回るうちに、予め決めていた診療科がイメージと違っていたり、逆にまったく見向きもしなかった科目について興味を持ってしまったり、非常に迷われる方が多くいらっしゃいます。
若い時に進路で悩むというのは自然なことで、科目選択においても何十にも上る科目から自分の専門を決めるということは簡単ではありません。
上記の資料にもありますが、偶然を積極的に作り出す上には、好奇心、持続性、楽観性、柔軟性、リスク・テイキングという要素が大切です。
ぜひ積極的に“偶然”と関わり、自分が目指すべきキャリアを築いていただければと思います。


4  最後に。。。自分らいしいキャリアとは?